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洞爺湖のゆるキャラ「トッシー」
 

洞爺湖トッシーについて

日本三大未確認動物(UMA)
 今から50年ほど前のある日、中学2年生になって数ヶ月が経ったある日の午後、突然、私は思い立った。「よし、今から手漕ぎボートで中島に行こう!」と。
  誰が何と言おうと、思ったのだから仕方が無い。どれくらい仕方が無いかと言うと、小学6年生のときに「よし、自転車で洞爺湖一周をしよう!」と思ったのと同じくらい、仕方が無い。

 今では信じられないことだろうが当時は車もほとんど走っておらず、大して危険性を感じてはいなかったし、周りもそう感じていたのだと思う。それが証拠に、母は弁当を作って送り出してくれたのだ。 友人を誘って早速出かけた。
 財田からポンペツで川遊びをして川東、岩屋を抜けて壮瞥町中洞爺、東湖畔を経て滝の上。昭和新山へは上り道が きついのでパスし、西湖畔辺りで昼食。壮瞥温泉を過ぎて虻田町洞爺湖温泉の光風園で一風呂浴びて温泉ゲーム。  月浦から青淵、旭浦からあけぼの、浮御堂の前を通ってメインストリートへ入り、家へ帰る時計回りのルートだった。
 これを何度か経験していたので洞爺湖の大きさを実感として知っていたため、深い考えも無く思い立ったのだった。
 中島までの距離はおおよそ4キロメートル程度であろうと考え、歩けば1時間程であろうが足の遅い手漕ぎボートではその2〜3倍の時間と当たりをつけ、家の前の砂浜に置いてある手漕ぎボートに乗って 一人で漕ぎ出したのだ。

 手漕ぎボートは進行方向に背を向けて進むため、漕ぎ出してしばらくの間はどんどん岸から遠ざかる ことで景色も変わり結構楽しめるのだが、さすがに1時間も漕いでいると、いくら漕いでもさっぱり景色も代わり映えがしない。頭をめぐらせて中島の方を見ても、さっき見た景色とどう変わったのかが分からないし、距離感も定かにはつかめない。
 それでもえっちらおっちら漕いで2時間ほど経った頃、手を止めて改めて回りの景色を見渡して考えてみた。この景色の状況から判断すると、あと1時間どころか2時間は掛かりそうだと判断。中学2年になって程無い細腕では、時速1キロメートル程が限界の様だった。 当時の私の身長は160センチメートルに満たず、体重は50キログラム未満と思う。

 あと1時間ほど先へ漕いでから戻ろうか、ここから戻ろうかと思案していたところ、後ろ側で水の跳ねる音がした。魚が跳ねたのかと思って振り返ると、20メートルほど先に出来た波紋の中心には黒くぬらっと光るものがあった。午後2時 半頃で 、太陽は十分に高かった。それは進行方向を斜め右前方へ横切って進む形で、ゆっくりと沈んで行った。私が見たのは、多分、長さが1〜1.5メートル程の部分であり、太さについては全体は見えなかったが丸みから考えて 相当な太さ、丸い形なら概ね30センチメートルくらいはある様に思えた。
 一瞬、「うわ、でっかい魚。イトウかな?それとも、アイヌの民話で聞いたことある巨大なエゾイワナ(アメマス)*1かな」と思ったのだけれど、例え2メートル超のイトウであっても、見えた部分に背びれが見えないのはおかしいと思い直した。
もっとも、クマを飲み込むほどのアメマスであれば、背鰭の見えない部分は長い(大きい)であろうが、その部分であればもっと直線的に見えるだろうと思うので、多分違うなと考えた。
また浮上するのではないかと思い、しばらく後ろを振り向く形で見ていたがそれ以降は一向に姿を現さなかった。

 そのうちに、あの得体の知れない何かが居た方向に背中を向けて進むことに対して急に恐怖を感じて、すぐにそこから引き返すことにしてぐるっと舳先を廻らせた。再び姿を現さないかなと思い つつ、また、襲ってくることはないだろうかと思って目はあの何かが消えていった方向に向けたまま、オールで水を掻きながらあれこれ考えを巡らせた。「巨大な魚でないならなんだろう、アザラシやオットセイの様な海獣かも知れない」とも思ったが、洞爺湖に海獣が居るなんて話は聞いたことは無い。もっとも、洞爺湖に金魚が居るなんてことは聞いたことは無かったが家の前でたまたま釣ったことがあるので、聞いたことは無くとも居ないとは言い切れないけれどな・・・などと思いつつ、しかし、淡水に海獣が生息出来るとも思えない。 そういえば小学校に入学する前の頃、洞爺湖に飛行機が墜落したことがあったけれど、それと関係は無いだろうな・・・などという思いも巡った。巨大な亀とも思ったが、あの見えた形状や質感からはあり得ないと思った。
もしかしたら大きなカラス蛇*2かも知れないと思ったが、普通のカラス蛇なら全長がせいぜい1メートル位のはずなので、あんなに巨大なカラス蛇など、これも見たことも聞いたことも無い。太さから推測すると、全 長は10メートルにもなる見当になってしまう。急に恐ろしくなって漕ぐスピードを上げた。行くときは、帰り分の余力を残さなければならないと思って軽く漕いでいたが、帰ると決めた以上、余力を残す必要も無いのに恐怖心が加わっての火事場の馬鹿力。行きよりはずいぶん短い時間で帰ることが出来たのだが、その に間は追ってくることも再び姿を見ることは無かった。

 帰る舟の中で必死にオールを動かしながら、最終的に考えをまとめた。あの正体不明の生物は洞爺湖の主であり、アイヌの民話に登場する「翼のある毒蛇神オヤウカムイ」(身体は黒く、目と口の辺りは赤い)に違いないと結論し、自分を納得させることとした。 そして、いつしか忘れた。

 それから十数年経った後に、屈斜路湖のクッシーや池田湖のイッシーと共に、洞爺湖トッシーが日本三大未確認動物(UMA)として話題になり、目撃談や推測を見聞きした中で、ひとつ心引かれる説があった。それは、かつて10万年前に洞爺湖に沈んだ木が何らかの理由で浮き上がったとする説だった。それなら私が見たものである可能性は排除できないと思ったのだ。洞爺湖を自転車で回る 際に、実際に沈木の見える場所があり、その姿を思い出したから でもある。
 しかし、私がそのときに不審物を見た場所は、洞爺村の桟橋のすぐ西側の我が家の前の砂浜と中島を結ぶ直線上のほぼ中央当たり、多分、水深は100メートル 以上あるだろうと思われる場所だ。そんなにもうまく湖面まで浮き上がってくるものだろうか・・・。

 エゾシカ説は論外と思った。この頃はまだ中島にはエゾシカはいなかっただろうし、第一、湖面から水中に沈んで再び浮上することは無かったのだから。 (力尽きて沈んだのなら、姿を消すことも有りかも知れないが、それ以前に泳ぐ音を聞いてはいないし、泳いできたらしい波紋も無かった。 中島からにしろ、中島へにしろ、そもそも進行方向が異なる。)
沈木の可能性は排除しきれないが、やはりあの日あのときに目撃したのは洞爺湖の主である「オヤウカムイ」であろう。
目撃した私がそう思うのだから仕方が無い。誰が何と言おうと、私がそう思うのだから仕方が無いのだ。

*1 洞爺湖に棲む大アメマスがクマだかエゾシカを飲み込んでそれがのどに引っかかって死に、壮瞥滝が出来た話。
*2 
当時は知らなかったが、カラス蛇と呼んでいたものはシマヘビの黒化型(メラニスティック)らしい。 めずらしいもの
   らしいが、子供の頃はしばしば見た記憶がある。山の中が遊び場所であったためかも知れない。
洞爺湖トッシー
 昭和43年頃、洞爺村の桟橋と中島を結ぶ線の中央、小さな黒点の辺りでの話です。
 
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