石窯を造ってみる

石窯(パン焼き窯)を造ってみようと思った。思ったのだからやるしかない!

「形から入る!」とは良く聞く言葉だけれど、私の場合は「図面から入る!」となります。
図面を書くためにはそれなりの情報が必要で、ただ漫然と考えるよりはるかに多くのこと
考え、調べ、思い悩む必要があり、細かい部分に思いが至る様になるからです。
それは「机上の空論」とも言いますが、一方では「シミュレーション」とも言われるものです。
すなわち、 「先ずは理論武装から!」入りたいと思います。

これを書いている時点では、 石窯の現物を見たり使用した経験は皆無なので、試してみ
なければ 何も分からない。(近い内に石窯を見に行き、触る予定はある。)
そこで、様様な必要情報を得るための実験窯である。 当然ながら低予算となり、解体の
可能なものとしたい。
 
石窯の設計のために石窯をイメージする
人の経験は尊重し、参考にさせてはいただくが、そのまま盲目的に信用や真似はしない。
私にとっては、考え、試行錯誤することこそが楽しみだからだ。理解をしないまま、形だけ真似たのでは、せっかくの「生みの苦しみを楽しむ」を放棄することでしかない。

私の思う石窯に求められる性能とは、以下の様なものである。(一般論は知らない)
 @ 調理に必要な高温を得られること
 A 均一な輻射熱を得られること
 B 適温を必要な時間だけ維持できること
 C 形状と外観は、石窯石窯(イメージが大事)していること
 D 造りやすく、維持しやすいこと
 E 上記の性能を得るために、手間がかからないこと
 F 上記の性能は、コストパフォーマンスの上に成り立つこと
   (金に飽かすことは、不足を楽しむ主義に反するので絶対に避ける)
ちなみに、煙道は必須ではないが、ある方が石窯らいので設置が望ましいと思う。
 
石窯設計のために炎(燃焼)を考える
改めて考えてみると、中学・高校で習った程度の科学知識しか持っていない私にとって
は、 燃焼と言うのもなかなか奥が深い。(ちなみに、理科系は得意科目だった)
子供の頃はずいぶん薪割りもしたし薪ストーブもがっつり使ったので、経験値はそれなりにあるのだけれど・・・

燃焼に必要な要素として、次の3つらしい。
 1.可燃性物質(石窯では木)
 2.酸素
 3.温度(着火するためのマッチ等の火源)

さらに、完全燃焼の要素として、次の3つがあるらしい。
 1.燃焼温度(Temperature)
 2.滞留時間(Time)
 3.空気との混合状態(Turbulance)

まあ、この辺ならなんとなく分かる。
燃焼の三要素は全て私が用意するので、問題は無い。石窯で問題になるのは完全燃焼 の三要素の内、空気との混合状態だろうと思う。空気との混合状態よければ燃焼温度は 必然的に上がるはずだと思うし、滞留時間だってコントロールは易く、短くて済むはず だ。
 
石窯設計のために燃焼を考える
「木」が燃えるのは「分解燃焼」と言うことらしい。その後は、分解したガスを全て 放散して 炭化した結果「木炭」となって「表面燃焼」に移り、最後は、「熾き」となって 「拡散燃焼」と なるらしい。まあ、この辺りもなんとか分からないことは無い。
ローソクの芯も同じ過程をたどると考えれば、炎の温度の分布もなんとか理解はできる。

しかし、私が知りたいのは木を燃やす際に最も効果的な燃焼室の高さ、炎の高さなのだ。
例えば、煙突の引き込み効果に期待をしている薪ストーブの高さは参考にならない。
引っ張られると、炎は驚くほど伸びるのを経験的に知っているからだ。
ある程度の大きさのある石窯であれば煙突の設置は絶対的に必要であると思われるが、
小さくて煙突を設置することが効果的では無いと思われる小窯において、より効率の良い
燃焼と窯内の温度の上昇を考えるとき、窯の天井高さは十分にガス化が行われる程度の
高さが必要だと思われるからだ。もちろん、だからと言って天井が高過ぎてしまっては十分な輻射熱が得られないことにもなりかねない。 輻射熱だけを考えるならば、天井は低いに越したことは無いのだから。
その高さは正確には分からないが、焚き火の際の炎の高さが参考になると思われるのだ
が、 限られた材積の中でその高さを満足させるための窯の形状はかまぼこ型にならざるを得ないと思われる。ちなみに、四方八方をかまぼこ型にするとドーム型となることは言うまでも無い。

と言う訳で、ドーム型が理想形であると思うのだが、耐火レンガでドーム型を造る場合には小型化が難しい(加工の多さと材の無駄)という欠点がある。>>> 石窯ドームの検討図
今回は最初の実験用窯でもあり、手間、コスパを考慮してドーム型を避ける。
石窯の築造と実験(実験窯はSF-5D3改2型)をイメージする
実験用石窯を設計するにあたり、思いつくままに、いくつかの条件を設定してみた。
この設計に関しては、先にも書いた通り石窯について全く知識・経験の無い私が、頭の中
だけで組み立てた机上の空論なので、実証実験の中で諸諸を変更して行く可能性は高いが、 以下に書き出してみる。

1.今回の窯は、石窯の機能・能力を確認するための試験機である。
  実験の3つの目的は
  @窯内温度250℃を達成するまでの所要燃焼時間(手順も含め)のデータ取得
  A窯内温度の経時変化および窯内温度200℃前後の保持時間データ取得
  B風除けおよび簡単な断熱をした場合の経時変化データ取得
2.耐火煉瓦の使用数は60本を目安とする。(Sサイズ※とする)
3.火床面積は0.12〜0.15平方メートル程度、窯内体積は30〜35リットルとする。
4.このサイズで耐火煉瓦を使用したドーム型は困難であり、かまぼこ型とする。
5.このサイズで煙道を取り付けることは現実的では無いため、設置の工夫をする。
6.出来る範囲内でドーム窯のテイストを醸し出したい。
7.鉄板製の扉を取り付ける。(可搬型とし、固定型としない)
8.鉄板製の扉には「温度計(揚げ物メーターまたはオーブンメーター)」と、小さくとも良い  
  が断熱ガラスを使用して「覗き窓」を設けたい。この窓によって、チェックのために扉を
  開閉する時の熱損失を防ぎたい。扉そのもの断熱性についても留意。
9.調理時用鉄板製扉には、窯内の温度変化を測定するための温度計を設置する。
10.輻射熱の広がりをイメージし、天井の高さ・形状(アール)に留意する。
11.石窯と架台の総荷重は240キログラム以内とし、木製の架台に設置する。
12.架台(木部)への断熱を考慮する。
13.架台には車輪を取り付けて簡単移動を可能とする。(ガゼボは作成・使用しない)
14.架台には周りに合板等を張り、扉を設置して使用器材を収納する。
15.窯内温度200℃前後での保持時間が不足するはずなので、モルタルによる蓄熱量の
   増加の可否、および風除・断熱して変化を確認する。
16. 火床面積は1斤のパン型2つ、30センチメートルのピザの入るサイズとする。
   (なお、 リンナイ卓上型ガスオーブンの内サイズはW330×D325×H330ミリメートル
    であり、加熱の方法等は異なるがひとつの目安にはなるかと思う。)
17.目標は、極小窯では不可能と思われるパン焼き窯であり、瞬発力のみで足りるピザ焼
   き窯ではない。従って、次に作成するパン焼き窯に必要な情報を収集することである。
18.可搬型とするため、移動時の振動に耐えられる構造とする。(芋積みとしない)
※以上、順不同で思いつくまま。重複があるかも知れないが、思いはそういうことです。

ちょっと多すぎると思うかもかも知れないが、実験窯なのだからこれくらいは必用だと思う。
漠然とした設定条件では、結果も漠然としたものでしか無くなる。 細かい実証のためには
細かい設定が必要だと考えている。
 
改めて確認するが、この 実験で最も重要なテーマは、
@「200℃前後の窯内温度を 30分間程度を維持することが可能か?」ということであり、
A「実現ができない場合には、どの様にすれば実現できるか?」 ということを探り、確認することである。
 
石窯設計のためのルール(規模、形状と図面番号について)
基本的なサイズ(便宜的に図面を整理するための区分のため、例外もある)
 S:耐火レンガ60本(Fレンガは70本)以下または窯内体積35L以下
 M:耐火レンガ61本以上70本以下または窯内体積36L以上40L以下
 L:耐火レンガ71本(Fレンガは81本)以上または窯内体積41L以上
形状
 B:かまぼこ型の基本形状
 D:ドーム型を意識した形状
レンガ種類
 J:JIS規格レンガ(SK32)
 F:フランス耐火レンガ

 ・ヤマト便のウェブサイトに表示される、最大の重量は180kgである。
 ・結果として、S・M・Lの少しづつ違う図面が20枚近く出来てしまった。
 ・理想とされるドーム型が、いかに小さく出来ないかも図面で確認した。
 ・さらに小型のドーム型は、耐火レンガの大量加工が必須で、手間は膨大。無理!
ちなみに、タイトルを石窯同好会と銘打ちましたが、一人同好会ですので、念のため。
 

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